アマヤドリ -404ページ目

彦一のヤツ

年始は忙しくて新調したスケジュール帳がまだ真っ白。
初めだけしか書かない3日坊主よりマシ…??

ベランダに小鳥がくる。
はじめは恐る恐る木の実を食べていたが可愛いのでお米を撒いてあげるようにしたら今では友達を連れてくるようになった。風の強い日には植木の蔭に隠れたりもする。
鳥は水と餌と隠れ場所があればそこに立ち寄るようになると昔本で読んだ。

「彦一とんち話」という本。

ところで、この彦一さん、私の中では一休さんと同じくらいメジャーなのだけれど…友達は誰も知らない。

その彦一さんの言う通り小屋をおいてあげたのだけど、鳥はこなくなってしまった。
不審なものにおびえているのだろうか。
ああ…せっかくちょっとずつ心が通じてきていたのに…

おもいこみか。

ただいま、東京。

東京に帰ってきた。
とても充実した日々でした。
温泉に浸かり美味しいものを腹イッパイに食べたのでぴちぴちになってしまった。

旅の間は乗り物によく乗って、そのあいだ色んな事を考えた。
目にただ景色を映しながらとりとめなく頭の中を探ると、出てくる出てくる。
朝の渋谷を歩いた事や棚から私を見下ろす幼かった頃の猫。
まだ薄暗い早朝にやけに烏がうるさかった事。
車の後ろで荷物をささえたこと。。
建物の煉瓦と秋空の色のコントラストがくっきりすごかった事。
見てしまった写真。

あ~、帰ってきてしまった。
頑張るしかないなあ…

鳥たちはいま、眠っているのだろうか。

朝から晴れてはいたが風が強かった。
夕方には急に動きだした雲がすぐそばの山の頭を隠してしまった。大きな鳥ですら風に流されて思うように飛べない様子。
ひとつ山を越えると風は遮られしばらくすると桃色の雲が浮かんだ。鳥たちも飛ばされつつ風に乗ってきたのだろう、山を越えていた。
柔らかな夕方の光の中上昇気流に乗ってひとしきり遊んだ後、ひらひらと舞い降りるように巣に戻っていった。

今はあの風で大気の靄が吹き払われたのか空気は澄み、冷え込んでいる。

遠い町の灯と遥かの星たちが瞬いている。

加藤晴彦

加藤晴彦が出てくる。
私は岸の向こうの小島に泳いでいこうとする。
加藤晴彦は結構親しい友達で、「波が激しいからやめといたら。まあ、でも君は行くんでしょ」といった冷めた感じで私を見ている。
ぐんぐん泳いで、その真四角の人工的な島に着くが、ちっとも面白くない。
泳いでもとの岸に戻る。
後少しのところで大きな波が背後から来て、私はちょうどその波に、どら焼きの餡のように包まれそうになる。
その時手に、濡らしたくないものをもっていたことを思い出し、瞬間的に波が砕ける最後の隙間から手を伸ばし、それを加藤晴彦に渡そうとして、加藤晴彦がびっくりした顔が見える。
結局それを手渡すことは出来なかったのだが、その隙間から手を伸ばして顔が見えたことが可笑しいらしく、私はいつまでもげらげら笑っている。
加藤晴彦は「まったく、子供かよ」と呆れている。


★   ★   ★


昔加藤晴彦ににていた。

かんけいないけど。

ほんとうに探しているのは

稽古を続けてるとまず芯がしっかりしてくる。そしてその周りに必要な支えがついてくる。
夢中になっていると今度は余分なものが落ちてくる。音楽と自分の呼吸と血の循る音の中で頭の中の鏡に映る私を見つめる。
本当に限界が近づいた刹那、時間は遅く流れる。体は頭の中の映像と重なり、追い抜いていく。

心臓が破れそうでも足を止めることはできない。

高く飛びたくて私は天を見つめる。爆発しそうな体を抱き締める。
ちぎれる程指先を伸ばして触れたいものは、切り裂いて闘っているものは時間なのではないかと時々思う。