時間は果てしなくあり | アマヤドリ

時間は果てしなくあり

冬枯れの樹を見てると木は地上にも根を張っているように見える。
樹は地下では水と土を吸い地上では空気と太陽を呼吸している。
そう考えるとだんだん逆さまに頭を地面に突っ込んでいるみたいに見えてくる。
私はもぐらだ。


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小さい時、大きな鏡を顎の下に据えそれを覗き込みながら歩くのが大好きだった。
鏡は天井を映し込んでいる。それを眼下に見ながら歩くから天井が床になるのだ。
照明を避け梁を跨ぐ。急な段差にひやりとする。逆に何にもない所でばりっと何かを踏んだりする(そうするとこの遊びはもうオシマイだ。母が怖い目線が飛んでくるから)。
外に出ようものならもうそこは真っ青な底無し。
脚がすくんでもう一歩も動けない。

どうしよう?

随分時間が経ってから思い切って一歩踏み出してみる。
落ちるはずなのに脚は確実に何かを踏んでいる。それはそこに見える不確かな雲の切れ端なんかじゃない、ちゃんとした硬い平らなもの。
いつ落ちても不思議じゃない。

そうして、どきどきに耐えられるまでそこにいる。